先生なら大丈夫ですよ、絶対に

投稿者:ありあ (1953年生まれ/女性/埼玉県在住)

バレエの講師をして長くなります。
今までかかわった生徒さんの人数も数えきれない数になりました。
普通の会社の仕事などとは違って、有給も病欠もありません。
休めばその分、収入も信用も、そして生徒さんも減る仕事です。

今もまだ続いていますが、長い講師時代で一番辛かったのが、50代になってからの急性盲腸の手術。
本当に急なことで、その日もレッスンがあったのですが、あまりに痛むのでレッスン前に医者に寄ったところ、即入院して手術しないとまずいと言われたのです。

急に仕事を休むだけでも問題なのに、手術入院となったら何日休まなければならないか、見当もつきません。
とりあえず生徒さんたちと、スタジオの主催者に検査の合間にメールをしてお断りを入れたのですが、正直不安で一杯でした。
手術に対する不安ではなくて、この年で腹部を切って内臓を切って、せっかく作った筋肉を駄目にしてしまったら、バレエ講師としてリカバリー出来るのだろうか、という不安。
そして、生徒さんたちは勿論、私がいない間でも稽古するでしょうから、手術から戻った時には誰も稽古場にいない、他のスタジオに移ってしまうのではないか、という不安。

それでも命には代えられないと、手術したわけですが、後で言われたところによるともう少しで危ないところだったそうです。
手術の次の日に、生徒さんの一人とスタジオの主催者さんが見舞いに来てくれました。
思いもよらなかったことなので、大変に嬉しかったのですが、主催者さんが席を外した時にふと弱気が出て、生徒さんに。

「このまま引退かなあ、腹筋も何もかも全部消えちゃった感じ」と弱音を吐いてしまったのです。
止める間もなくぽろっと口からこぼれ出た言葉でした。
すると相手の生徒さんがニコッと笑って言うのです。

「先生なら大丈夫ですよ、絶対に」

別に何の保証もない言葉です。
その生徒さんは医者でも何でもない人なのですから。
でもその時の、信頼に満ちた言葉のニュアンスと、私の復帰を信じて疑わない笑顔は、私のその後のリハビリを助けてくれたのでした。

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