友人として、あなたの病気にとってできることをすべてしてほしい。

投稿者:ひまわり (1966年生まれ/女性/愛媛県在住)

現在、看護師をしています。
私の心に残っている一言、それは乳がんにかかって治療の選択に迷っていた際に、友人がかけてくれた一言です。
当時、初期の乳がんを患い手術を受けたばかりでした。
手術を終え、転移もないことが判明し安心したのもつかの間、今度は医師から抗がん剤を使用することを告げられたのです。

私の癌は、抗がん剤を使用すべきか否か微妙な状態。
どうしても必要だと言われれば迷いもなかったでしょうが、「どうするか自分で決めてください」と言われたので迷いが生じていました。
当時テレビや雑誌で抗がん剤を使用することによる弊害が叫ばれていたこともさらに私を迷わせました。

また、自分自身が看護師であり、ある程度の知識があることによる疑問も生じました。
病気の治療法は日進月歩、今日ベストだと言われた治療方法が明日にはダメだと言われることも決して皆無ではありません。
抗がん剤が将来的には間違った方法だと言われる可能性もゼロではないのです。
しかも数々の副作用があり、治療を受ける本人にとってはかなりのリスクのある治療です。

そんな考えが交錯する中、結論が出ない状態が続きました。
最終的な結論を出さねばならない期限が迫ってきます。
私は看護師である友人に意見を求めることにしました。

彼女とはすでに30年近く付き合いのあり、気心の知れた仲でした。
総合病院の主任をつとめており、しっかりものでサバサバした性格ですが、情に厚く涙もろい一面もあり、後輩の看護師に慕われています。
もちろん私の病気のことは知っていましたが、抗がん剤のことについて話すのはこの日がはじめてでした。
病気についての現状を話しているうちに、抗がん剤の話になり、私は今の悩みを彼女に打ち明けました。

その瞬間、それまで和やかだった彼女の表情が、急に真剣な表情に変わりました。
しばらくじっと考えた後、彼女は言いました。
「確かに未来のことはわからないよね。抗がん剤が怖い気持ちもよくわかる。」
そして、私の目をしっかりとみてこう続けたのです。
「でも私は、友人として、今現在あなたの病気にとってできることをすべてしてほしい。やらずに後悔してほしくないから。」

彼女の真摯な思いがストレートに伝わってきました。
看護師として、彼女も私と同じ抗がん剤に対する疑問を抱えていたはずです。
それを踏まえたうえで、あえて受けてほしいと言った彼女の内面にある「生きてほしい」という叫びが私の胸を打ちました。
「友人として」という言葉に込められた重みが私の迷いを一掃したのです。

この言葉の後押しもあり、私は抗がん剤の治療を選択し、副作用もほとんどない状態で治療を終え、再発もない状態で4年目を迎えようとしています。
友人として改めて彼女の存在の大きさをかみしめたと同時に、医療に携わる看護師として患者さんにかけるべき言葉について考えさせられた一言です。

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