一つだけ言えることは、あなたにはこの先、少しずつ味方が増えていくということです。

投稿者:藤原大輔 (1979年生まれ/男性/大阪府在住)

僕は統合失調症で数年前、入院しました。
被害妄想が強烈で、看護師さんたちのことも敵だと思ったり、笑われているように感じました。
僕の主治医のS先生は焦燥に襲われて手を繋いで欲しがってる僕に、手を差し伸べて下さいました。
美人の先生で、保護室という個室に閉じ込められていた頃、散歩に連れて行ってくれて、ふと手を繋いでも嫌がりませんでした。

僕の妄想は収まり、副作用も緩やかになり、目立っていた社会性のない振る舞いも収まっていくと、いよいよ退院が近づいてきました。
聞くところによると、退院したら「デイケア」という施設で数年を「リハビリ」して過ごし、その先に就職があるというのです。
30を過ぎ職歴もなく左手に障害(自殺未遂)を負った僕に就職先なんてない、と僕は泣きました。
S先生は、そんなに仕事先がないないと言われると私が悲しくなります、と言いました。

先生は全てに肯定的でした。
聞いた所、人の生きざまに興味があるからこの仕事に入ったそうです。
S先生は、退院後のことを心配している僕に言いました。
「一つだけ言えることは、あなたにはこの先、少しずつ味方が増えていくということです。」
僕は何となく安心を覚えたような、励まされた感じでした。

退院し、デイケアで力強いスタッフや面白いメンバーに出会い、集団が苦手な僕がスロースタートで受け入れられていき、少しずつ友だちができました。
デイケアでも苦しいこともあれば、症状が出たり、再入院ということもありました。

S先生は他の先生に交代し、あれから会っていません。
いつか就職したら手紙を書こうと思っていたのですが、話がこじれて転院し立ち消えになりました。
変わっていく先生方も皆、僕のために最善を尽くす人たちでした。

統合失調症になる前、僕は一人で高望みして就職を探したり、アニメや漫画にふけったり、ニート同然の状態で社会から切れていました。
仲間が欲しくてSNSで失敗し、被害妄想が生まれたのが苦しみの始まりでした。

今、僕はまた過渡期で、カウンセラーと会いながら、バイトして生計を立てる道を歩んでいます。
あの時、僕を受け入れてくれた医療関係者やデイケアの仲間たちは、今でも続いている友人も含め、大切な僕の味方たちでした。

今でこそ味方は減りはしたものの、真心で人を打つS先生の一言は、けして嘘ではなく、希望をそっと教えてくれる、未来への誘いでした。
S先生にはもう会えませんが、あんなに思いやり深い言葉を与えてくれる人に出会ったことが、一生の思い出です。

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