あのアレンジは本物の一流にしかできない離れ業だよ。

投稿者:あめんぼ (1988年生まれ/女性/東京都在住)

姉妹でピアノを習っていて、幼い頃から2人揃って発表会に出ていました。
ソロで弾くのがほとんどでしたが、時には連弾したり、2台のピアノでスケールの大きな曲にチャレンジした事もあります。
私と妹は6歳差ですが、器用な妹は年齢差をまるで感じさせないパフォーマンスを軽々とやってのけ、私は密かにそれを羨ましく思う事もありました。

私は大学で音楽を学ぶ決意をし、音大ではありませんが、教育学部の音楽専修学科へと進学しました。
ピアノを専攻し勉学と並行しながらピアノの修行にも励む日々を送り、地元のピアノ教室にも通い続けたり発表会にも出演しました。

しかし、大学での課題に追われピアノの発表会の演目まで手が回らなかったというのは言い訳にほかなりませんが、私は大学2年生のときピアノの発表会で大きなミスをしてしまいました。
曲を聴いたことの無い、音楽にもあまり詳しくない方が聴いたら気付かない程度のものだったかもしれません。
しかし、耳の肥えた聴衆たちを前に演奏するわけで、当然私のミスには、その場にいた半数以上の方が気付いた事でしょう。
私はとっさにその場で多少のアレンジをし、頭から抜けてしまった部分を補正して弾き続けました。
お世辞にもその補正は音楽として美しいものでは無く、我ながらとんでもない事をしてしまったと大いに反省しました。

演奏が終わり、悔しくて見るも明らかに落ち込む私に、妹が声をかけてくれました。
「みんな気付いてないから大丈夫だよ。
気付いた人でも、あのアレンジはすごかったって思ってると思うよ。
確かにごまかししたのは分かったけど、それはちょっとピアノをかじって上手な気になってる人には絶対に真似できない、本物の一流にしかできない離れ業だよ。」

6歳も年下の妹にこんな大人っぽいフォローをされたのは、この時が初めてでした。
あまりの意外さに面食らってしまい、涙も引いてしまったことを今でもよく覚えています。
おかげさまでひどく落ち込むこともなく、前向きに失敗を乗り越えられました。

妹は結局音、楽の道は選ばずに現在は会社員として働いていますが、今でも姉妹で時折、連弾などを楽しみます。
妹と共通する趣味をもてたこと、そして妹がその世界での理解者となってくれたことは、私にとってとて幸せな事です。

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