当たり前のことじゃないんだぞ、すごいんだぞ

投稿者:ありかわ (1988年生まれ/女性/新潟県在住)

私は、人付き合いがあまりうまくありません。
それに内気で新しいことに挑戦するのがとても苦手です。
それに比べて、弟は幼少期から活発で人とぶつかることも恐れず仲間を作るのがとてもうまいです。
昔からそんな弟がとても羨ましく、羨ましい反面嫉妬もしていました。
2歳しか違わないのに彼はどうして私が出来ないことを簡単にやってのけてしまうんだろう。
私も友達が欲しいのに、仲間が欲しいのに、新しいことにどんどん挑戦したいのに。
けれど心の声を言えるわけもなく、彼のやることには応援の言葉を投げかけていましたし、さすがだねと常に誇らしく思っているように言っていました。

そんな私が、東北の震災を機にボランティアを始めました。
当時テレビ画面を眺めながら、母と呆然としました。
こんな私でも絶対に何か出来る、自然とそう思えました。
新潟県も大きな地震で被災していたからかもしれません。
新潟県はいち早く被災者の受け入れを発表してくれたので、被災者を受け入れている施設へ行き、募集をかけた着ない服や使わずにとってあったタオルなどの配給をすることにしました。
週末の土日を使い、県内を回ることにしました。

最初はきっと興奮していたんだと思います。
自分が凄いことをしている気分にでもなったのだと思います。
被災者の方々と普段の私では考えられないくらい饒舌に話していました。
しかし、3度目くらいから、急に自分のやっていることが偽善的で独善的なのではと思えて仕方なくなりました。
中途半端に手を差し伸べてしまっているのではないか、私は今後も長期的な目でこの人たちを支えていけるのか、どんどん自分に自信が無くなってしまいました。

そんな私の表情からきっと察しのいい弟は、力強く私を叱咤激励するかのように言ってくれたのです。
「当たり前のことじゃないんだぞ、すごいんだぞ」と。
偽善的で独善的だったのではないかという不安を一気に当てられてしまいました。
けれど、気付いてもらえたことが何より私の心を救ってくれたのです。
私が一番嫉妬していて、一番羨んでいる弟が、私の救世主となりました。

それからまた私は自分の決めたことなんだから頑張ろうと各地を回りましたが、いつも頭には弟の言ってくれた一言がありました。
この一言が無かったら、私はやりきれていなかった気がします。
そして、この一言以来、私は彼に嫉妬しなくなりました。
頼りになる弟として開き直れたのです。
今でも感謝しています。
ありがとう。

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