この声を覚えていてね。大好きだよ。

投稿者:ななこ (1985年生まれ/女性/神奈川在住)

私はおじいちゃんっ子です。
自分でいうのもなんですが、孫のなかで私が一番おじいちゃんになついていたので、おじいちゃんも私をとびきり可愛がってくれます。
そんないま80歳のおじいちゃんですが、約20年前に喉頭がんになり、声帯を摘出しなくてはいけなくなってしまいました。
最近だと、つんくさんが同じように声帯を摘出されましたよね。
声帯をとると声を失うことになります。

当時、小学生だった私は手術前におじいちゃんのいる病室に会いにいきました。
私は涙をぽろぽろ流したのを覚えています。
「おじいちゃんが死んじゃったらどうしよう」とか、「もうこの声が聞けないなんて想像できない」といった不安な感情でいっぱい。
おじいちゃんは、ぎゅーっと私を抱きしめて頭をなでて言いました。
「この声を覚えていてね。大好きだよ。」

手術は無事に成功しましたが、おじいちゃんのあの声はもう聞けなくなりました。
そのかわりコミュニケーションをとるために、腹筋を使った発声法を使ってガラガラ声で話すようになっています。

私はいまでは正直おじいちゃんの声がどんなだったか忘れてしまいました・・・。
おじいちゃんの昔の動画もなくて、いったいどんな声だったのか思い出すこともできません。
でも透明感のある優しくてきれいな声だったことは、ぼんやり記憶にのこっています。
そして、あの「覚えていてね」と言われたときの情景も鮮明に心に焼きついています。

おじいちゃんはいまでも元気です。
無口になってしまったけど、たまに話すときのガラガラ声もすっかり定着しました。
きっとおじいちゃん本人にとっては普通の声が出せないことはとても不便だし、恥ずかしい思いも今までいっぱいしてきた思います。
でも私達家族にとっては、命があることがやはり大事です。
おじいちゃんに会うたびに、また会えてよかったという喜びを感じます。
そして今年はやっと私の子供(おじいちゃんにとっての、ひ孫)の顔を見せることができました。
おじいちゃんにはまだまだ元気でいてほしいと心から思います。

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