お前、すげー頭いいじゃん

投稿者:siji (1985年生まれ/男性/東京都在住)

これは私が小学4年生だったときの話です。
私は頭がいいほうではなく、いつも同級生たちにバカにされている子でした。
それでも、私は何人かの子たちの遊びに数回、誘われた時期があります。
その日も数人で遊び、次に遊ぶ約束もして、その日にちをどこかにメモしようという流れになりました。
しかし、下敷きがないから書けないじゃん!とみんな戸惑っていたのです。

そこで私は、1人で滑り台のそばに駆けていって、滑り台の側面に紙を押しあてて、メモを書こうと考えました。
そのとき、後ろから元気よく「お前、すげー頭いいじゃん」という声が聞こえてきたのです。
振り向いてみると、その言葉を言ったのは優等生の子ではありません。
ほとんどしゃべったことのない、普段、先生に悪さばかりして怒られていた不良の子だったのです。

頭が悪いことをそこまで気にしてはいなかったものの、バカにされることはとても悲しいものでした。
しかしその男の子は、そんな私に向かって、頭がいいと当たり前のように言ってくれたのです。
本当に嬉しかったし、大人になった今でもはっきりと覚えているくらい私にとって彼の発言は、ほめ言葉でした。

男の子は、その後も、残念ながら不良としての悪さをやめませんでした。
私は、優等生タイプと他から言われて人気者である子たちからも相変わらずバカにされつづけました。
そんなときに背中を押してくれるのは、この不良少年のあの言葉なのです。

頭がいいというのは、優しい、がんばった、と言われるより、ランクの低いことかもしれません。
頭がいいと認められてどうなるわけでもないからです。
でも、小学校でみんなにバカにされつづけていた私は、彼に人としてちゃんと認めてもらえたような気がしました。

恩人のように感じるとはいえ、私から見ても、彼は人にイジワルをしてしまう本当の意味での不良だとは思います。
見た目だけ不良だっただけ、というレベルの少年ではありません。
だけど、誰よりも優しい言葉を、言えそうで言えないことを、彼はいとも簡単に言いのけてしまったんです。

大人になってわかりました。
少年は、頭がいい子だったんでしょうね。
いじめられっ子には優しい、それは1つの賢さです。
お前、すげー頭いいじゃん!と、私のほうが彼に言ってあげたいぐらいでした。

もし、彼とどこかで会えたら、すげー頭いいね!と言うだけではなく、あのときの君、すごく優しかったよとも言ってあげたいなと思っています。
人の存在をちゃんと当たり前のように認めることができる人は、賢いし、それはやはり大きな優しさだと感じるからです。

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