あいつはあれでええねん。

投稿者:gen (1986年生まれ/女性/奈良県在住)

あれは数年前の日曜日でした。
自宅で家族と共にお昼ご飯を食べた後、母と弟と私でテレビを見ていた時のことです。
その時私は大学性、弟は中学生でした。

実はこういう光景は珍しいことで、私と弟は普段あまり一緒に過ごすことがなかったのです。
性格が全く違うからか、何を話したらいいかも特に分からず、分からないなら別に無理に話す必要もないと思ってしまい、自然といつも距離が出来るようになっていました。
弟はテニス部だったため家にいないことが多かったのも原因の一つだったと思います。
その日曜日はたまたまテニス部が休みでした。

今しがた見ていたテレビ番組がCMに入ったところで、弟が母親に話しかけ始めました。
私はCMをぼんやり見ながら話半分に聞いていたのですが、そのうち弟は「そこそこ仲のいいクラスメイト」の話をし始めたのです。

「俺のクラスに竹やんって奴がおんねんけどな。
そこそこ仲良いんやけど、あいつはほんまどうしようもない奴やねん。
勉強も真面目にやらんし、クラブもやってないし、チャラいし、彼女と付き合ってはすぐ別れてとっかえひっかえしてるし」
と弟が自分の親友のことをそんなふうに話し出すので、私は不思議に思いながら、
「なんでそんな子と仲良くしてるん?イヤなんやったら離れたら?」
と聞くと、その時弟はこう言ったのです。
「ええねん。
あいつはあれでええねん。」

私はふと、家の中での私達の間柄を考えました
自宅は小さい一軒家なので、たまに一緒の部屋になるときがあります。
私がテレビを見ていて、弟は宿題をしていたりするのですが、特に何も喋りません。
お互いがお互いのことをやっているだけ。
そのうちお風呂の時間が来たら「どっち先入る?」「そっち先入って」「分かった」と言って一方が立ち上がる。
会話と言えばそんな事務的な内容だけで、私はずっと、どこか希薄に感じる私達のそんな間柄を心のどこかでずっと気にしていたのです。

でも弟は、多分それでいいと思っているのです。
お互い何も言わなくても、特に何も話すことがなくても、お互い全く違うことをしていても、私達は私達なのです。
私と弟はずっと私と弟なのです。
それでいいんだ。

何故かそんな思いが湧き上がり、不意にちょっと涙が出そうになったけど、恥ずかしいので堪えたのでした。

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