私は決して見返りが欲しいわけじゃない、その代わり、困った人がいたら今度はあなたが助けてあげなさい
投稿者:ひいす (1968年生まれ/女性/大阪府在住)
私が入社したばかりの時に、隣の部署にいた一回り以上も年上だったマリちゃんの言葉、私は今でも鮮明に覚えています。
私は生まれ育った高知を離れて、大阪の大学を卒業したあと、そのまま大阪で就職し、三つ上の姉と二人だけで生活をしていました。
その頃、ちょうど父親が事業に失敗してしまい、全く経済的な部分は親には頼れず、あげくに父親が消費者金融にまで手をつけて、その借金まで私たちが背負うことになってしまいました。
二人で働いてるとはいっても、まだ働きだしたばかりの姉妹二人に決して余裕はありません。
私たちは大学も奨学金でいっておりましたので、その返済もありました。
経済的に大変厳しく、生きていくだけで必死でした。
そんな時にマリちゃんと出会ったのです。
彼女は、一回り以上年齢も離れていたせいか、いつも私に優しく接してくれ、会社でのお姉さん、いやお母さん的な存在でした。
そんな優しいマリちゃんに自然とうちとけていった私は、気がつけば家の悩みなども包み隠さず全て話していたのです。
マリちゃん自身も若い頃はだいぶ苦労したようで、私の話にもいつも親身になって耳を傾けてくれました。
「あんたたち姉妹みてると、何だか昔の自分たち姉妹を見てるみたいなんだよね」
そう言って、時には一緒に涙まで流してくれる人でした。

あれは、確か真冬の水も凍りつくような寒い日。
経済的に余裕のない私たちは、給湯器もない古い文化住宅に住んでいて、ここまで寒いと毎朝、顔を洗うのも辛いという話をしていました。
そしたら、すぐ一週間後くらいにマリちゃんが家までやってきて、何が何だかわからないうちに、ガス給湯器を付けて帰っていったのでした。
当時、給湯器は7万円前後くらいの価格はしたはずです。
いくら可愛い後輩だからといって、普通さらっと出せる金額ではないと思いましたし、決してマリちゃんの給料もそんなに高くなかったと思います。
だから余計に彼女の気持ちが嬉しかったのです。
給湯器を付けてもらった翌日、マリちゃんに「何かお礼しないといけないね」って私が言うと、彼女はこう返してきました。
「私は決して見返りが欲しいわけじゃない、その代わり、困った人がいたら今度はあなたが助けてあげなさい」
自分がプレゼントを貰うことより、他に困った人がいたら、あなたがその人を助けてくれることの方がよっぽど嬉しい、そう言うのです。
その時、私には彼女がマリア様に見えました。
世の中にはこんな人がいるんだなと、ただただ感動しました。
彼女の言葉のおかげで、私の人生も少しずつ好転していきました。
今は、父の借金も全て返し終わって、姉も私も幸せな家庭が築けています。
これもマリちゃんに出会ったおかげ、マリちゃんに言われた言葉のおかげだと思っています。
彼女には今でも感謝しています。