先生は厳しい!
投稿者:玉野 (1987年生まれ/女性/福岡県在住)
数年前まで、短期間ではありましたが中学校の教諭をしていました。
赴任した学校はかなり荒れていて、授業ルールや生活規律が乱れている学校でした。
私は臨時講師の経験もないペーペーの新米教師で、不安だらけの教師生活でしたが、生徒たちはとても可愛かったです。
授業中の私語や立ち歩きは日常茶飯事で、暴言・暴力も頻繁にあり、そう珍しくない頻度で警察や児相、救急車などのお世話になる学校でしたが、生徒一人一人は結局良くも悪くも中学生で、毎日顔を合わせて声をかけたり彼らの生活を見ていれば、おのずと情がわいてきます。
それは生徒たちにとっても同じことだったのでしょう。
お互いの性格ややり方もだんだん分かってきて、軽口を言い合う仲になりました。

そんななか、私がよくやんちゃな生徒に言われていたのが、「先生は厳しい!」という言葉です。
それは生徒がトラブルを起こしたときに投げ捨てるように言われる時もあれば、休み時間のふざけ合いの中で言われることもありました。
この「厳しい」という言葉を言われるたびに、私は嬉しさと、大きな責任感を得るのでした。
私にとってこの言葉は、何よりの褒め言葉だったのです。
教育現場で生徒に好かれる先生には、大きく分けて2パターンあると思います。
1つは生徒に優しい先生。
若い方や女性に多いのかもしれません。
このパターンは、生徒らの言動を許容していくものです。
生徒のおふざけ等を「いいよいいよ」と受け入れていくので、生徒たちにとっては楽でやりやすいため、好かれるでしょう。
しかしこの場合、先生の器が大きく、よほど胆が据わっている人でない限り、ほとんどの場合、生徒のルール意識やモラルが破綻していき、規律のない状態となります。
もう1つは生徒に厳しい先生です。
男性や年配の方に多いかもしれません。
一見生徒には敬遠されそうですが、一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、生徒たちはこのパターンの先生を慕ってきます。
厳しさは、冷たさではないのです。
生徒のことを想うからこそ厳しくなるのです。
また、目先の快楽やその場しのぎではなく、生徒の卒業後や就職後、家庭を持った後など、長い目で生徒を見つめるからこそ、「今これを許してはいけない」「今これを身につけさせねばならない」という考えになり、厳しいと言われがちな対応になるのです。
私は何度なく生徒たちに「先生厳しい~!」と言われてきました。
そのたびに「そうよ、あなたたちのことが可愛いから、先生は絶対厳しくするの」と答えてきました。
ほとんどの生徒が、私の真意を分かってくれていたと思います。
退職する時、もらった色紙には「厳しかった」「でもありがとう」の文字があふれていました。