人生ピークは90歳

投稿者:ケロ (1987年生まれ/女性/鳥取県在住)

数年前に、主人と出かけた温泉旅行での話です。
その頃、私たち夫婦は入籍してから間もなく、新婚旅行を兼ねたような旅でした。
結婚したばかりで、全てが輝いて見えた日々はあっという間に過ぎ、これからの夫との暮らし、将来のことなどを深く考え不安や希望を抱くようになっていました。

私と夫はいわゆる歳の差婚。
夫は私よりも一回り以上年上です。
だからこそどんな時でもどっしりと構えている夫は頼りになり、時には可愛い一面もあり、私にとってかけがえのない存在でもあります。
しかし、年齢的に考えてもいずれ夫は私よりも早く亡くなってしまうかもしれない、お互いの年齢を考えると子どもを授かることは難しいかもしれない、そうなったらいつか自分は一人ぼっちになってしまうのではないだろうか、とマイナスなことを考え、寂しい気持ちになるようになっていました。

そんな思いが払拭できないままで行った温泉旅行。
美味しい食事をたくさん食べて、楽しいお酒を飲み、お風呂にゆっくり浸かりながらたわいない会話ができ、とても楽しく幸せな時間を過ごしました。
宿泊した温泉宿の周辺には、一帯が古風な風情ある景観で長く続く石畳の道、栄えた温泉街がありました。
夜になり、少し散歩に出かけようと言う夫に連れられて温泉街を散策しました。
ちょっとした飲み屋さんや飲食店、夜店や射的場などノスタルジックな街並みが楽しませてくれました。

とある商店から店内の光が漏れていました。
既にお店は閉店していたようなので、軽く通り過ぎようとした時、商店の出入り口に貼ってある張り紙に目がいきました。
その張り紙には「人生ピークは90歳」と大きく達筆で書いてありました。

私と主人は微笑みました。
素直に良い言葉だなと感じました。
私が「わたしたちも90歳まで元気でいなくちゃね。」と言うと夫は「絶対に俺より長生きしてよ!先立たれたら、俺一人では何にもできんから。」と答えました。

その夫の言葉ではっと気が付きました。
いつか自分がひとりになってしまうことを恐れるより、夫を一人にしちゃいけない、夫に寂しい思いをさせてはいけないと思いました。
これから何十年も経って、いつか夫が先に旅立ってしまっても、私は90も100も生きて夫の心とともに毎日がピーク、毎日が楽しいと感じられるように生きて行こうと感じました。

「人生ピークは90歳」という言葉は私の宝物です。

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