何処に行こうと何をしようと、いつまでも君のままで居てください。

投稿者:徹さんのドラ娘 (1977年生まれ/女性/東京都在住)

大学を卒業し、自分の夢を叶えるために実家のある北海道を出て東京に向かう時のことです。
父からもらった一言が、今でも私が人生に迷ったときの指針となっています。

当時東京に行く事は、母には随分前から相談していたものの、父にはなかなかその事を告げられずにいました。
結局出発3日前というギリギリになって、「私、明後日東京行くから」となるべく努めてさらりと言いました。
父は母から聞いていたのか特に驚いた顔も見せず、笑いながら、「あんたの事は女の子と思って育てたことないからね。東京行っても大丈夫だと思うよ」と言ってくれました。
ほっとしたような…少し拍子抜けしたような…。

父は普段は無口ですが、怒ると怖い頑固モノでした。
夢を追って東京へ行くなんていう浮ついた話は、当然、大反対されるものと覚悟していたのでギリギリまで言えなかったのです。
そして、父はそのまま散歩かどこかに行ってしまいました。

なんとなく釈然としないまま、私は引っ越しの準備を続け、しばらくしてまた居間へ降りてくると、父の姿はなかったのですが、テーブルの上に銀行の封筒が置いてありました。
封筒の表には父の堅い生真面目な文字で「何処に行こうと何をしようと、いつまでも君のままで居てください。」と書かれてあり、中にはお金が入ってました。

それ以来、人生に迷ったときは「自分らしく生きてるだろうか?」という問いが常に心に浮んできます。
就職する時、結婚を決める時、人生の節目節目で父の一言を胸に選択してきたように思います。

そして現在、5歳と3歳の子を持つ母になった今でも迷う事は山ほどあります。
周りのお母さんと自分を比べてしまったり、無理矢理立派な親になろうとして背伸びしたり、子供のする事の善悪が突然わからなくなる事もあります。
そんな時にはふと父からもらった唯一の手紙である、あの銀行の封筒に書かれた「君のままで」の真面目くさった文字を思い出します。
すると急に肩の力が抜けていくような感じがして、自分らしい母親の在り方を考えられるようになる気がします。
あの時この言葉をくれた父に、今でも感謝しております。

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