お前は、お前のままでいい

投稿者:陽平 (1978年生まれ/男性/愛知県在住)

今からもう20年以上前の話になるが、その場面だけは鮮明に思い出すことができる。

中学校での卒業式のことだ。退屈な式は滞りなく進み、そろそろ終盤に差し掛かろうというところ。
卒業生に向けて、各担任から最後の一言を贈る場面になった。
3年間、各生徒の成長を見続けてきた先生方、さすがに感極まり、涙をこらえながらのスピーチが続いた。
しかし、案の定といっては何だが、やはりお決まりのワード「人生は厳しいがあきらめず乗り越えろ」、「感謝の気持ちを持ち続けろ」、といった予想通りの内容の話が続く。
しかも、感情がこもっている分、妙に長ったらしいスピーチを話される先生も多い。
確かに気持ちはわかるが、どんなに感動的な内容でも、長ったらしい話は聞き手をしらけさせる。
当時から冷めていた私は、そんな様子を妙に冷静に見ていた。

やがて、ある先生の番になった。
美術を担当し、あるクラスの副担任という立場であり、目立たない、おとなしい印象の先生であった。
その先生は、マイクをつかむなり、言った。
「お前は、お前のままでいい!以上!」

最近、中学の同窓会が開かれた。
たまたま卒業式の話になり、その先生のその一言、その場面を覚えている人が複数いることに驚いた。
今になって思うが、あの一言は本当にいい言葉だ。他人と比べ、他人を意識し、自分自身がぶれだすと、人は自信を無くし、同時に魅力を失う。
また、他人の期待に応えようとしたり、自分を必要以上に大きく見せようとしたりすると、尋常でないストレスを感じ、心身ともに疲れてしまう。
無理に自分を変える必要なんて無いんだ。
特に意識することなく、自分らしくいられれば、一番魅力的なんだ。
そう実感させられた言葉であった。

20年以上も前の卒業式の、たった一言の言葉を、複数の人間が覚えているということは、それだけその言葉がパワーを持っているということである。
今でも、環境の変化で、苦境に立たされ、ストレスを感じたとき、自分に言い聞かせる。
「お前は、お前のままでいい。」

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