あんたの人生なんだから、お母さんのことは考えなくていいよ

投稿者:R13 (1982年生まれ/女性/アメリカ在住)

海外で職に就いていたころ、仕事中あるメールを弟から受け取りました。
「お母さんがくも膜下出血になって手術、入院しました。今は無事です」と。

仕事中ということもあり、わたしはそのメールの内容をすぐに理解できませんでした。
上司に「母がくも膜下で手術だって書いてあるんですけど」と伝えると、たまたま私が働いていた会社が旅行業だったので、上司がすぐさま翌日の帰国便を取ってくれ緊急帰国しました。
そのメールを見てから日本に着いて母の顔を見るまでの2日間、ほぼ一睡もできずにやっと病院にいる母の顔をみることができました。

母は、思ったよりも元気でしたが、やはり脳の病気です。
かなりかつぜつが悪くなっていて、その光景をみて私は心の中でショックを受けていました。
第一声は「あんた、帰ってきちゃったかあ。心配させないようにだれにもい言うなって言ったんだけどな」と、笑いながらいっていましたが、私自身は笑えず、病人に気を遣わせてしまっている状態にものすごく恥ずかしくなりました。

その後もずっと母と無理のない程度に話していたのですが、母が突然言いました。
「あんたの人生なんだから、お母さんのことは考えなくていいよ」と。
一体何のことかと話を聞いてみると、「どうせあんたは完全に帰国しようって今考えてるでしょ?でもね、あんたの人生なんだし、お母さん、こうやって生きてるんだから、帰国する必要ないよ。悔いの残らないような人生を送りなさい」というのです。

母は私が母の病気のせいで日本に戻るだろうと考えているのを察知したのでしょう。
我が家は父がおらず、母に弟2人と私の4人家族で、母が私達を1人で育ててくれたので、わたしの母に対する思いは人一倍強いのです。
それをわかっている母が、私の心を呼んでこんな言葉を言ったのだと思います。

言葉の真意を理解したと同時に涙が出そうになりましたが、そこはこらえ、色々考えた結果、母に甘えて結局海外での生活は続ける事にしました。
そのおかげで私は今まで後悔のない人生を送れていると思っているので、母のこの一言は忘れられないものとなっています。

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