吃音は悪い事じゃなく丁寧に話そうとしている証拠

投稿者:翔子 (1987年生まれ/女性/大阪府在住)

私には生まれつき吃音があり、その事がとてもコンプレックスでした。
言いにくいのは、さ行とた行。
私の氏名は苗字も名前もさ行が付くのでいつも嫌な思いをしていたのです。
例えば自己紹介する時も、「し、しししし、ししし」と何度も同じ単語を繰り返してしまったり、「よろ、宜しく、お、お願いしま、します」と途中で言葉に詰まってしまいます。
学校では「会話が続かない」と言われて、友達が出来ずずっと1人で過ごしていました。

高校卒業後は大学へ進学せずフリーターに。
行きたい大学があったのですが、人間関係に疲れてしまい、自暴自棄になっていたのです。
でもバイトをしようと探したのですが、、吃音のせいかどこも不採用でした。
やっと見つかったバイト先はビジネスホテルの客室清掃。
接客ではありませんし基本的に話さなくていい仕事なので、とても気分が楽でした。

そのバイト先を5年続けて、そのうち私は社員になりました。
そして部下も出来たのですが、その人に仕事を教える時にどもってしまい、ついいつも「聞き取り辛くてごめんね」と謝っていたのです。
でもその子からある時、1通の手紙を貰いました。
そこには「いつも丁寧に仕事を教えてくれてありがとうございます。私も人見知りで話す事が苦手で、手紙にしました。」と書いてありました。
そして「先輩はごめんねと謝るけれど、全然悪い事じゃないです。先輩が言葉に詰まってしまうのは、相手に丁寧に話しかけようとする証拠です」とあったのです。

私はそれを読んで、涙が出てしまいました。
それまで「聞き取り辛い」と疎まれる事はあっても、「丁寧に話そうとしている証拠」「悪い事ではない」と言われた事はなかったからです。
その手紙を貰ってからは何だか自信がついたようで、言葉に詰まる事が少なくなりました。
どもるのは悪い事じゃないと思う事によって、あんなにどもっていたさ行もた行も全然詰まらず言えるようになったのです。

周りからは「表情が変わったね」「明るくなったね」と言われるようになりました。
ネガティブな性格からポジティブになり、本当に人生が一変しました。
その手紙をくれた子には「あの時あの手紙に書いてくれた言葉のおかげで変われました、ありがとう」と伝え、今でもその子とは仲良しでいます。

人生で一番心に残った、心に沁みた一言です。
あの一言がなければ、今でも私は吃音に悩み、暗い人生を送っていたと思います。

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