人間はな、誰しも我が身が大事なんだ

投稿者:gensugita (1986年生まれ/女性/奈良県在住)

ある朝の出来事。
私は学校に行く為、慌ただしく準備をしていました。
いつも家を出るギリギリまでゆっくりしてしまうのが私の悪い癖なのです。

横では祖母が洗濯物を部屋に干しており、台所では父親が私の様子を見て、
「だからいつも言ってるじゃないか。
先にかかるであろう時間を見越してないからそうなるんだ」
と、呆れ返りながら母親が作った朝ご飯を食べています。
父親はいつも論理的で、昭和気質な性格。
朝ご飯はいつもご飯とみそ汁しか好まず、それ以外を出すと怒り出します。
私がバタバタしているのを見る度いつも小言を言うので、正直、辟易していました。

一方、着替え終わった私は次に急いでコンタクトレンズを入れようとしていました。
と、その時です。
眼球に乗せようとして指先に乗せていたレンズがポロッと下に落ちてしまったのです。
私は衝動的に「うわぁしまった!」と声をあげました。
コンタクトレンズは透明でとても小さいので、一度落してしまうと探すのが大変なのです。
この時間の無い時に何たる失態。

その時、無情にも横にいた祖母が、
「うわぁ!わ、私知りまへんで!」
と、すかさず叫ぶのです。
えぇおばあちゃんそりゃないよ!
というかまだ何も言ってないよ!
と、祖母に不満を抱きながらも急いで探していました。
すると、いつの間に朝ご飯を食べ終えたのか、すぐ横に父親が立っていました。
そして私に向かってこう言ったのです。
「お前よく覚えておくんだ。
人間はな、誰しも我が身が大事なんだ」

私はしばらくきょとんとして父親の顔を眺めましたが、
「いやいやそんな大それたセリフをこの状況で使う?」
と、ツッコミを入れてみました。
しかし父親は真剣な表情のまま続けるのです。

「僕は真剣な話をしているんだぞ。
いつか将来お前が社会に出た時に何か困ったことが起こったとする。
中には親切な人もいるかもしれん。
助けてくれる人もいるだろう。
けどな、人様には人様のやらなきゃならないことがある。
初めっから人様を頼るのは間違いだ。
我々は自分で自分を一番大事にしなきゃいけない。
だからお前は早め早めに行動して自己管理をしっかりしなきゃいけない。
僕が口を酸っぱくしていつもそう言ってる理由が分かったか?」

私はぐうの音も出ず、黙って聞いていました。
全くもってその通りだったのが悔しくて仕方がありませんでした。
その後、家を出るのが遅くなってしまった私を、父親は車で駅まで送ってくれました。

あの時の父親の言葉を忘れられないまま社会人になった私。
あれ以来、何かと早め早めの行動が習慣になり、お陰で未だ遅刻したことはありません。

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