12才の君は今しかいない。

投稿者:はなくろ (1974年生まれ/女性/兵庫県在住)

私はその先生が嫌いでした。
小学校6年のときのクラス担任で、どこがというわけではありませんが、なんとなくウマが合わなかったのです。
反抗期ということもあってか、よく先生に逆らっては困らせて楽しんでいました。
話の長い、お説教好きな先生でしたが、嫌いな先生のお説教なんて左から右へ聞き流すのが常でした。
が、小学校での日々が残り少なくなった3月のある日、帰りの会での先生の言葉は忘れられません。
「12才の君は今しかいない。」

もちろんそれは当たり前のことです。
次の誕生日が来たら誰でも一つ年をとります。
しかし先生の声は「今」に重きを置いていました。

「今」という時間は次の瞬間には「さっき」になってしまう。
今という時間はあるようでないようなものだ。
子供時代など矢のように過ぎ去る。
12才なんて一瞬だ。

そんなことがその一言から伝わってきたのです。

「12才の君は今しかいない。」
私は教室の一番後ろ、すみっこの席でその言葉を聞きました。
よく晴れて明るかったことを覚えています。
窓際だったので日が射して暖かかったことも覚えています。
クラスメイトの後頭部をぼんやり眺めていたことも覚えています。
早く帰りたいな、なんてぼんやり考えてきたときにその言葉は私を射抜きました。
先生は、今この一瞬一瞬がいかに大事か、二度と戻らない今日という日がどんなに大切なものであるかを、これから中学校へ進もうとする私に教えてくれたのでしょう。

この言葉は、13才になっても20才になっても40才になっても、私の心の片隅に掲げられています。
まるで小学校の教室に張り出してあった標語のようにです。
「13才の私は今しかいない」「20才の私は今しかいない」「40才の私は今しかいない」。
この言葉は、いくつになっても限られた人生を大切にしなければいけないこと、一日一日、一瞬一瞬を全力で生きることを教えてくれます。
苦手な先生ではありましたが、人生において非常に大切なことを教えてくださったと今では感謝しています。

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