だったらまた新しいの作ればいいじゃん

投稿者:境界線 (1981年生まれ/女性/福岡県在住)

あの時の私は、高校三年生だった。
中学三年生の夏に経験した恋愛でこっぴどく痛い想いをした私は、それから「誰かと向き合うこと」が怖くなった。
その恐怖から目を逸らして現実から逃げ回り、高校時代の私は、死ぬことと、好きなバンドのことしか考えていなかった。

高校に入ってから出逢った彼女は、たまたま好きなバンドが同じだったことから仲良くなった。
ずっと同じクラスで、毎日毎日彼女と話をするためだけに学校に行っていたようなものだった。
私は彼女のことがとにかく好きで、独占欲と、恋愛感情とも言えるくらいの気持ちを持って彼女との毎日を過ごしていた。
今思えば、ただの「共依存」だったのかもしれない。
でもあの頃は、毎日彼女と話せるだけで満たされていた。

楽しかっただけの毎日に暗雲が立ちこめ始めたのは、高校生活最後の一年が始まった頃だったように思う。
中学時代にできた心の傷と向き合うことを拒否したことで、性格的にも大きく歪んでしまっていた私は、どんどん嫌なヤツになっていった。
言ったら彼女が困ること、傷つくこと、嫌な気持ちになること、そんなことを平気で言っていた。
その反面で、ご機嫌を伺うようなことをしてみたり、何でもない日なのにプレゼントをあげてモノでつなぎ止めようとしたり。
私は彼女のことを試していたんだと思う。

健全な関係が少しずつ崩れ始めた頃に、彼女から訊かれたことがあった。
「あんたさ、もし私に切られたらどうする?」
私は迷いもせずに「死ぬ」と答えた。
即答だった。
それからほどなくして、彼女から手紙が届いた。
もう直接話すことすら「無理」だとその手紙には書かれていた。
「一緒にいたくてもいられない。体が拒否する」
その手紙を読んだ時「あぁ私が死ぬ時が来た」と思った。
暗記するほどその手紙を読んで、散々泣いて、どうしたらいいのかがわからなくて、錯乱している状況の中で、ふと「死ぬ前に謝らなきゃ」という感情が生まれた。

死ぬ前に声が聞きたい。
もう一度だけ話がしたい。
謝りたい。
そう思った私は、彼女の携帯に電話をかけた。
出てくれないかもしれないという不安をよそに、彼女は普通に電話に出てくれて、ちゃんと話を聞いてくれた。
どんな話をしたのかまではもう覚えていない。
ただ「壊れたものはもう戻らないじゃん。私はどうすればいい?」と彼女に訊いたことははっきりと覚えている。
そしてその時、自分では思ってもみなかった言葉が彼女から返ってきた。

「だったらまた新しいの作ればいいじゃん」

この言葉に、どれだけ救われたかわからない。
私が訊いた後、迷いもせずに即答してくれたことも本当に嬉しかった。

心が捻じ曲がっていたあの頃の私は、復讐にも近い形で「死」を選ぼうとしていた。
「私が死んだのは自分のせいだ」と罪の意識に苛まれればいい。
一生消えない心の傷になってやる。
そう思っていた。

でも、彼女の言葉に救われ、少し冷静になった私は、あることに気がついた。
彼女は、私を切り捨てたら私が死を選ぶであろうことは知っていたのである。
それでも、一緒にはいられないと言った彼女の想いは、相当なものだったんだろう。
私が起こしうる行動を知りながら切り捨てたこと。
そして「また新しいのを作ればいい」と言ってくれたこと。
私の都合のいい考え方かもしれないが、あの時の私は、そこに彼女が私に対してかけた一縷の望み、願いを感じとっていた。
そこまで弱くはないだろう?
大丈夫だろう?
そんな風に言われているような気がした。
彼女自身も精神的に追いつめられていたにも拘らず、それでも彼女は私に手を差し伸べてくれていたのである。

私はその時に初めて、過去の傷とちゃんと向き合い、乗り越えて、自分が変わらなきゃいけないと思えたのだ。
それから、何ヶ月か自分と向き合い、本当に苦しい毎日を過ごして、自分の中での答えが見つけられた時、私はまた彼女との新しいカタチを作ることができた。

私の人生を繋げてくれた彼女からのこの言葉は、今でも私の宝物である。

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