ごちそうさま、美味しかったよ
投稿者:あゆ (1953年生まれ/女性/埼玉県在住)
学生時代に初めてバイトをした時のことです。
当時はよくあったコーヒー専門店で、お客さんはゆっくり喋ったりすることも無くコーヒーを飲んだらすぐに帰ってしまうようなお店でした。
こちらも常に新しいお客さんが入ってきた時には間髪入れずに対応、が基本のお店でしたので一日が終わるとぐったりしていたものです。
走らない程度に急ぎ足で常に店内を移動して、飲み物を運ぶのは勿論ですが灰皿も変えお冷をつぎ足し、飲み終わったカップを下げと、いくらでもやることがあったので脚が棒のようにもなりましたね。
基本レジはバイトは担当せず正社員がやっていましたが、手が足りない時にはバイトもレジに入ったりもしていました。

ある日たまたま人手不足でレジを担当していた時のことです。
殆どのお客さんは無言でお金を出して無言で帰っていきます。
まあそれが普通ではあったのでそんなもんだとこちらも割り切っていました。
がその日、レジ前に立ったお客さんは伝票を受け皿に置いて「お願いします」と一言付け加えてくれたのです。
ちょっと驚いて見上げてみると、本当にごく普通のサラリーマンらしい男性でした。
その男性は付け加えて、
「ごちそうさま、美味しかったよ」
と言ってくれたのです。
何か疲れが吹っ飛んだような気がしました。
お釣りを渡しながらの「ありがとうございました」が普通よりいささか気持ちがこもりましたね。
このちょっとした一言がその時本当に嬉しく感じたものです。
その時以来私も外食やコーヒー飲んだ後のレジでは必ず「ごちそうさま、ありがとう」の一言を言うようになりました。
あの時の私のようにレジ担当の人の顔がちょっと明るくなるのを見ると、あの時の男性に今でも感謝の念が沸いてきます。