最後には笑っていてくれるだけで、いいよ

投稿者:パプリカ (1980年生まれ/女性/兵庫県在住)

この言葉を私が母からかけられたのは30歳の時の事です。
その頃私は大学時代から約十年間付き合って結婚を前提に同棲していた恋人と、お互いに社会人になり、すれ違いやコミュニケーション不足から別れた所でした。
2人で同棲していたマンションから実家に帰る事になった私は荷物を引き上げる事になり、その事を母に告げると何も言わずに手伝ってくれました。
実家に帰った後も特に別れた原因を根掘り葉掘り聞くような事もせず、私が落ち込んでいるのを静かに優しく見守っていてくれました。

彼とはお互いに嫌いになって別れると言うよりも、結婚のタイミングもこのままでは見えないしズルズル一緒に居てもどうなんだろうとお互いによく分からなくなってしまって別れたと言う形だっただけに、気持ちを中々切り替える事が出来ませんでした。
私自身はただ日常生活を取りあえず送る事だけで精一杯の状態でした。
毎日仕事に行って帰って来て眠るだけの生活を繰り返していました。
実家に戻りそんな生活を二ヶ月程送った頃に少し周りの事が見える様になってきて、ふと自分は母にどれだけ心配をかけているんだろうと思いました。

早くに父を亡くし女手一つで育ててくれた母は、普段からとても明るくて私が社会人になってからは友達のように話せる仲でした。
そんな母に詳しい事も話さず、ただ「別れる事になったから実家に帰る」としか告げなかった私に、母は「分かった」とそれだけ言って私が帰るのを手伝ってくれました。
絶対心配しているはずだからせめて何があったのか話そう、そう思っても正直私自身まだ上手く気持ちの整理も出来ておらず、彼への気持ちも断ち切ることも出来ずの状態で上手く母に全てを話せる自信はありませんでした。

そこで自分の気持ちやこれまでの事を手紙に書いて母に渡した所、それを読んだ母が私にくれた返事の中にはこう書いてありました。
どんな事があっても、迷惑をかけても、自暴自棄になってしまう日があってもいい。
ただ悩んで泣いても「最後には笑っていてくれるだけで、いいよ」。

その手紙を読んで私は実家に帰って以来、母に泣いている所を見せないようにはしていましたが、心から笑った顔を見せた事も無かった事に気が付きました。
それからは無理をして笑うのではなく、少しずつ彼との思い出を振り返るのではなく今できる事を一生懸命やってみようと気持ちを切り替える事が出来る様になりました。

一年後、仕事や友達との時間を楽しめるようになった頃、偶然別れた彼と再会しました。
そしてその再会を切っ掛けに再び連絡を取る様になり、別れてから三年後に私は彼と結婚しました。
一番つらかった時に私を支えてくれた母の言葉は今でも私の宝物です。

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