きいろ!

投稿者:かなこ・すぷらうと (1988年生まれ/女性/アメリカ在住)

障がい児童デイサービスに勤めていたときのことです。
障がい児童デイサービスとは、特別な支援を必要とする児童に対して、学校の放課後やお休みの日に通所してもらい、支援活動を行う場所です。
どの子もとても可愛く、本当に愛おしいのですが、中でも一際わたしに懐いてくれる男の子がいました。
その男の子は、軽度の知的障がいのある子でしたが、活発に活動し、いつも笑顔で周囲を明るくすることのできる男の子でした。
その子は色の識別が難しいのですが、将来その子が社会に出て就労が出来るよう、職員で根気強く、支援や見守りをしていました。

ある土曜日の朝、いつものように送迎車に乗って子供達のお迎えにいっていると、その日の空はとても広くて澄んだ色をしていることに気づきました。
気持ちがいいなあ、と深呼吸したわたしは、車に乗ったその男の子に「◯◯君、みて。今日の空、きれいだね」と言いました。
その男の子も、なになに?という面持ちで、車の窓から空を見上げてニコニコしました。
わたしは続けて、「さて問題です!ジャジャン!今日の空は、なにいろでしょう?!」と笑顔で質問してみました。

するとその子は、「きいろ!」と即座に元気良く答えたのです。
「そっか~、黄色かあ。黄色の空もきっときれいだろうね」と答えたわたしは、はっと気づいたのです。
「そうか、空は”水色”っていう決まりはないんだ」
確かに、夕方の空はオレンジだし、早朝の空はピンクかかっていることもあります。
でも、それ以前に、その色は人間の目を通して識別しているもので、その中で空の色を決めてしまうのは、とても小さいと感じたのです。

犬などは、色彩を余り持たない世界にいると言います。
地球でこれだけの生物がいる中で、人間の基準をとってそれを「常識」としてしまうのは、なんだか自分がとてつもなく小さな世界で生きていると感じたのです。
いろいろな生物が混在して、そしてその中で共生しているわたし達です。
地球単位で物事を見ると、目の前の差別や偏見に違和感を覚えることと思います。

障がい者への理解は進んいると思いますが、まだまだこちら側が理解を働きかけないと気づいてくれない世の中です。
そんな世の中を、その男の子は「きいろ!」という言葉で一刀両断したような、そんな気持ちになりました。

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