お前は何があっても絶対食っていけるよ

投稿者:ぐぐちょん (1988年生まれ/女性/東京都在住)

それは、高校生の時入っていた部活のコーチが言ってくれた言葉でした。
高校三年生の時私は、いろいろあり引きこもりがちになっていて、正直卒業も怪しいレベルの出席日数、成績でした。
ただ部活だけは真面目に、そしてその道でプロになりたいと思うほど真剣に打ち込んでいたので、引退してもコーチが来る日はたまに部活に顔を出していました。

その日も、コーチが来ている日でした。
お昼休憩のとき、コーチを囲んで生徒、顧問も一緒にお昼を食べるのですが、私もご一緒させてもらいました。
たわいもない話をし、食事を済ませ、さあ午後の練習がんばるぞ、という雰囲気の時、たぶん顧問が私の進学の話を持ち出したのでしょう。
将来の話になり、いずれコーチと同じようにこの道のプロになりたい、という話を真剣に話しました。

正直言って、どの世界もそうでしょうが、私が所属していた部活のプロなんてほんの一握りで、ましてそれで食っていくなんて夢のまた夢でした。
今思えば、コーチも自分のチームを持ちながら、いろいろな学校で教えていることで食えていたんではないかな、と思います。
そのくらい厳しい世界に飛び込みたい、という私の気持ちを汲んでくれ、コーチは話を静かに聞いてくれました。

いつもはわりと冗談などを交えながら話をするコーチが真剣に聞いてくれたこと。
そして何より、「お前は何があっても絶対食っていけるよ」と言ってくれたこと。
とても胸に突き刺さりました。
10年以上経った今でも、言われた景色をハッキリと思い出せます。

進学校なのに進学せずにそういう道に飛び込むなんて、せめて大学いってサークルでやればいいじゃないか、と周りの大人たちに言われ続けていた私にとって、その言葉がどんだけ心の頼りになったことか。
今でも、その気持ちは忘れられません。

引きこもりがちなのは相変わらずでしたが、無事に卒業し、自分なりに妥協し大学に入学。
それと同時に、その道に入るための専門学校へ入学。
コーチのチームにも顔を出すようになりました。

しかし、その後些細なことで喧嘩別れをしてしまいました。
そして一昨年、高校時代の顧問からコーチが癌で亡くなったことを聞きました。
たくさんの学校で教えていたコーチだったので、御別れ会が盛大に開かれ、私も参加してきました。
本当は面と向かってきちんと謝罪したかったです。
できなかったことが悔やまれてなりません。

結局その道は諦めてしまいましたが、コーチに言われた言葉を胸に辛いことを乗り切りながら、社会生活を送っています。
きっと何年たっても忘れられない言葉だと思います。

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