俺はゴールまで一瞬も諦めなかったから。

投稿者:峯脇心 (1984年生まれ/男性/熊本県在住)

中学、高校、大学と陸上競技(長距離)をしていた時の話です。
高校時代、簡単な気持ちで入ってみた部活の顧問の先生はとても厳しい人でした。
教員であるにもかかわらず過去には実業団経験もある方で、進学校といえど部活動にも妥協を許さない人でした。

走るのが遅ければ罵声を浴びせたりしますし、先生自身もまだ現役で走られていたので、先生と一緒に練習することもしばしばありましたが、そのような時が一番最悪です。
県下でもトップレベルの選手と方や普通レベルの高校生。
まさに地獄でした。
しかし先生の指導のおかげで、高校3年時にはどうにか県大会の決勝に残れるかどうかの実力をつけることができました。

そして、3年生の時の県高校総体の男子5000メートル。
これが最後の試合です。
予選で負ければそれで終わりです。
それまで苦しい練習にも耐えたので、優勝は狙えずとも決勝まで残りトップレベルの試合をして有終の美を飾ろうと考えていました。

しかし、いざレースが始まるとレースは膠着状態。
誰も仕掛けたりせず、ラスト一周まで20人くらいの大集団が残っていました。
決勝に残れるのはその中の10人。
正直、私はスピードには自信がなく、ラストスパートになると不利になることはわかっていました。
そして、ラスト1周地点で一瞬考えてしまったのです。
だめかもしれないと。
ほんとに一瞬でした。
高校最後のレースでしたし、また、ラスト1周しかなかったことからそれ以降は無我夢中で走ったのですが、なぜか、その時一瞬だけ諦めの気持ちを持ってしまったのです。

結果は、0.1秒差で予選落ち。
予選落ちしたことで後輩は泣いてくれるし、自分自身も悔しくて悔しくて泣き続けましたが、先生だけは違いました。大激怒です。
実は、先生はラスト1周地点で私に何か叫んでいたのです。
私に対し、俺が何を言ったのかわからなかったのかと言ってきました。
レース中できつかったこともあり聞こえていなかったと正直に答えたところ、さらに激怒。
だからお前は負けたんだと。

理由が分かったのは、弟が高校3年生になり、同じく県高校総体で種目は違いますが、800メートルの予選に出場した際の出来事でした。
800メートル走は、予選と決勝だけでなく、予選、準々決勝、準決勝、決勝と決勝までかなり険しい戦いが続きます。
弟も県トップレベルの実力はありましたが、その時はあまり調子は良くなさそうで、準々決勝でもぎりぎり残った試合運びでした。
そして、準決勝が始まり、ラストは混戦でビデオ判定でした。
正直、私は調子のよくない弟はだめだったなと思いましたが、結果は、見事決勝進出。
試合後に弟によく決勝に残れたねと言ったところ、弟からは当たり前のように答えが返ってきたのです。
「俺はゴールまで一瞬も諦めなかったから。」

そのとき、ようやく高校時代最後に先生がなぜ激怒していたのかを理解しました。
よく勝負は一瞬でつくといいますが、まさにその通りだなと思いました。
一瞬の思考が、0.1秒というわずかな違いを生み出したんだとわかったのです。
先生はきっと最後まで一瞬も諦めるなということを叫んでいたのだとわかりました。

同じような実力のものが集まれば、最後に結果を決めるのは結局は気持ちだと思います。
気持ち次第で人間の動作や思考は微妙に変わってくるので、結局同じように見えた実力の中でも最終的な結果が違ってくるのだとわかった経験でした。

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