頼りになります
投稿者:とも (1978年生まれ/女性/愛知県在住)
私は29歳の時に高校教師に採用され、その3年後に新人A君が入って来たときの話です。
私が勤務する高校は発達障害や不登校経験のある生徒が通う学校で、教え方や生徒・保護者との接し方にも人一倍気を遣う必要があります。
また学校の母体が塾という事もあり、空き時間は外部へ広報活動へ出向いて売上貢献に携わることもあり、かなり忙しい職場です。
A君は理系の大学院を卒業後に入社してきました。
大学生の時は塾で勉強を教えていたこともあり、指導には自信があったようです。
しかし実際に担任を持つようになってから不安だという事を口にするようになりました。
周りは見て見ぬふりで、みんな仕事を抱えて人の悩みなど聞く余裕がないというのが正直なところだったと思います。
私は進路担当という事でA君とペアを組んでおりましたので、彼の様子が少し気になり、ある時相談室を借りて彼と2人で話しました。

A君との話は最初は授業の進め方や気になる生徒の話が中心でしたが、次第に表情が曇り、「次の休暇で屋久島に行くことを決めたんです」とポツリと話し出しました。
最初はその発言をただの旅行かなと思い、「いいねー。楽しんできてね」と私は言葉を返したのですが、実は彼のこの発言はかなり覚悟を決めた一言だったのです。
もう少し重く受け止めれば違っていたかも知れません。
そして学校の3年生が卒業を迎える時期に、A君からの誘いで再び相談室で話をしました。
「3月で退職し、新しいステージに向かいたい。今まで辛いこともあったが、私に相談することができ今まで続けて来られた。ホント頼りになります」というような内容のことを、今度はしっかりと私の顔を見て話してくれました。
彼の表情にはもう曇りなどありませんでした。
私は末っ子で育ってきたので、誰かに甘える事が今まで多かったのですが、A君に「頼りになります」と言われてとても嬉しい気持ちになりました。
教師としての実績はまだそれほどありませんし、日頃失敗も多くある私ですが、そのような中で彼の力になれた事がとても嬉しく思っています。