俺らにとっては数ある仕事の1つかもしれないが、お客様にとっては人生で一度きりだ。
投稿者:三浦真行 (1991年生まれ/男性/秋田県在住)
私はブライダル業界に勤めておりました。
興味本位で求人に応募し、縁があって採用して頂いたのがきっかけでした。
ブライダルの知識は全く無かった私ですが、上司の方々に支えられ、一生懸命に仕事をしておりました。
しかし働き始めて1年以上がたったある時期、私は一つの悩みに直面していました。
それはズバリ転職に関しての悩みでした。
ブライダルの職場はお客様方の幸せな空気に包まれた現場です。
やりがいを感じる時や感動で涙してしまう事も多々あります。
しかしその実、日々の業務量は凄まじいもので、仕事に追われる毎日を過ごしていました。
激務の中で私は、一つ一つの仕事に思い入れが薄れていき、単純に作業をこなすだけの感情しか持てなくなりました。
仕事がたまっているので、朝8時には出勤し、帰宅する頃には夜中の2時や3時が当たり前の生活が続きました。

そんなある日、私は同期入社である同僚のK君に相談を持ちかけました。
K君は私よりも2つ年上で、プライベートでも仲良く、同僚でありながらもお兄ちゃん的な存在でした。
そんな彼と時間を合わせ、仕事の休憩時間に相談をしました。
「正直もう会社を辞めようと思っている」
回りくどい話し方は嫌いな私なので、要件を単刀直入に言いました。
K君は少し戸惑いの表情を見せつつも、冷静に話を聞いてくれました。
やっつけ仕事になっている事、精神的にも肉体的にも負担が大きい事・・・・
それらの話をしっかりと聞いたうえで彼はゆっくりと話し始めました。
「俺も結構しんどいけど、毎日めちゃくちゃ楽しいよ」
私は彼の言葉が信じられませんでした。
彼は何故こんなにも厳しい環境の中で、楽しいという感情を抱けるのか不思議でした。
そしてK君は、私の悩みを吹き飛ばす一言を放ちました。
「俺らにとっては数ある仕事の1つかもしれないが、お客様にとっては人生で一度きりだ。」
私は愕然としました。
言葉の内容自体は、新人研修の頃などにも上司に言われた事もあるようなフレーズですが、何より彼の話し方に驚きました。
なんの迷いもなく、真っ直ぐな目で、全く嘘のない言葉だということが手に取るように伝わったからです。
単に私を励まそうとしているから言ったのではなく、心の底から思っていることを、ただ口にしただけったのです。
私は自身の仕事の仕方を恥ずかしいと感じました。
疲れたから、仕事が回らないから、といった身勝手な理由で、お客様の人生で一度きりの大切な場を蔑ろにしてしまっていたのだと。
休憩時間を終え、それぞれが自分の仕事へと戻りました。
彼の言葉を聞いてから、自分の抱えている仕事への感じ方が変わりました。
一つ一つのお客様に対して、全力でサポートしようと・・・
そう思ってから不思議なことに仕事が楽しく感じるようになりました。
お客様の喜んでいる姿が見たい一心で、様々なアイデアを出し、実現されることに喜びを感じるようになりました。
彼の一言がなければ、私は今も仕事の喜びを知る事が出来ずに過ごしていたでしょう。